富士山は、日本の龍脈が集まる頂点ともいわれる場所だ。私が100箇所以上のパワースポットを巡る中で何度も実感してきたのは、強い土地のエネルギーは周辺に広がっているということ。富士山のふもとには、その気脈の恩恵を受けたとされる神社や湧水地が点在していて、1泊2日あれば5箇所をじっくり味わえる。

この記事では、体感ベースで組んだ富士山周辺パワースポット巡りのモデルコースを紹介する。行ってみて感じたのは、富士山エリアは「巡る順番」と「時間の余白」で体験の質がまるで変わるということだった。

1泊2日モデルコース──全体マップ

まずは全体像を把握しよう。1日目は富士山北麓(山梨県側)、2日目は南麓(静岡県側)へ移動する構成だ。

  • 1日目午前:北口本宮冨士浅間神社(富士吉田市)
  • 1日目昼:新屋山神社 本宮(富士吉田市)
  • 1日目午後:忍野八海(忍野村)
  • 2日目午前:河口浅間神社(富士河口湖町)
  • 2日目午後:富士山本宮浅間大社(富士宮市)

1日の巡礼は2〜3箇所が上限。これは紀伊半島で1日5箇所を詰め込んで、3箇所目から五感がぼんやりした経験から学んだルールだ。富士山エリアでもこの原則は守ったほうがいい。

【1日目午前】北口本宮冨士浅間神社──杉並木の参道で五感を開く

富士山駅から徒歩約20分、または車で約5分。富士山の北の玄関口にあたるこの神社は、創建が西暦110年と伝わる古社だ。国指定重要文化財の本殿を擁し、富士山世界文化遺産の構成資産にも登録されている。

参道に一歩入ると、樹齢数百年の杉やヒノキが立ち並ぶ森厳な空気に包まれる。ここでは到着後すぐに動き出さず、まず5分、立ち止まってほしい。触覚で杉の樹皮の温度を感じ、嗅覚で朝の湿った樹木の香りを吸い込み、聴覚で鳥のさえずりに耳を澄ます。私はこれを「五感を一つずつ開くメソッド」と呼んでいて、これをやるかやらないかで土地から受け取る情報量が驚くほど変わる。

境内の見どころは神木「冨士太郎杉」「冨士夫婦檜」。巨木のそばに立つと、幹から放たれる湿度と温度のわずかな違いを肌で感じる人も多い。早朝は参拝者が少ないので、できれば開門直後の朝8時台に訪れたい。

滞在目安:40〜60分

【1日目昼】新屋山神社 本宮──山の神が鎮まる静かな社

北口本宮冨士浅間神社から車で約10分。大山祇命(おおやまつみのみこと)を主祭神とする新屋山神社は、山の恵みへの感謝が原点の神社だ。金運にご利益があるという言い伝えで知られるが、行ってみて感じたのは、金運うんぬん以前にこの土地が持つ静けさの濃度だった。

境内は決して広くないが、周囲の木立が外の音を遮り、社殿の前に立つと不思議と頭の中が静かになる感覚がある。富士山2合目には奥宮もあるが、奥宮は冬季閉鎖(例年11月下旬〜翌4月頃)のため訪問前に公式サイトで確認しよう。

ここで昼食をとるなら、富士吉田名物の吉田のうどんがおすすめ。太くてコシの強い麺は、巡礼で使ったエネルギーを補うのにちょうどいい。

滞在目安:30〜40分(昼食別)

【1日目午後】忍野八海──富士の伏流水が湧く「神の泉」

新屋山神社から車で約20分。忍野八海は、富士山の雪解け水が溶岩層を約15年かけて通り抜け、地上に湧き出す8つの池の総称だ。世界遺産富士山の構成資産であり、環境省の名水百選にも選ばれている。

ここは「パワースポット」として意識しなくても、水に触れた瞬間に五感が勝手に開く場所だ。年間を通じて約13℃という湧水に手を浸すと、指先からじんわりと感覚が研ぎ澄まされていく。以前、分杭峠のゼロ磁場で30分以上滞在して指先が温かくなる体感を得たことがあるが、忍野八海では水の冷たさという物理的な刺激が入り口になるぶん、初心者でも体感しやすいと思う。

8つの池にはそれぞれ龍神が祀られているという伝承がある。観光客で賑わう「湧池」だけでなく、少し離れた「出口池」まで足を延ばすと、人が減って水面の静けさがまったく違う。旅は祈り──そう思えるのは、にぎやかな場所ではなく、こういう静かな水辺にいるときだ。

滞在目安:60〜90分

1日目はこの3箇所で終了。河口湖周辺で宿泊し、翌朝に備えよう。

【2日目午前】河口浅間神社──樹齢1200年の七本杉に包まれる

河口湖北岸、富士河口湖町に鎮座する河口浅間神社は、864年の富士山噴火を鎮めるために創建されたと伝わる古社だ。富士山世界文化遺産の構成資産でもある。

この神社の圧巻は、境内にそびえる七本杉(山梨県天然記念物)。いずれも樹齢1200年以上、樹高約40メートルの巨木で、それぞれに「御爾杉」「産射」「齢鶴」「神綿」「天壌」などの名がつけられている。五番と六番の杉は「二柱」と呼ばれ、縁結びの杉としても知られている。

巨木の根元に立つと、頭上の樹冠が空を覆い、光と影が交互にゆれる。以前、中国地方の山中で無名の祠に出会ったとき、「有名でない場所こそ祈りが残る」と感じたことがあるが、河口浅間神社もまた、知名度のわりに訪れる人が少なく、1200年の時間が凝縮した空気を味わえる場所だと感じた。

滞在目安:40〜60分

【2日目午後】富士山本宮浅間大社──湧玉池の霊水で旅を締めくくる

河口湖から富士宮市へ、車で約1時間。全国に約1300社ある浅間神社の総本宮が、富士山本宮浅間大社だ。主祭神は木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)。

この旅の締めくくりにここを選んだのは、境内にある湧玉池の存在が大きい。富士山の雪解け水が溶岩層を通り抜けて湧き出すこの池は、かつて富士登山者が禊ぎをした場所だ。池のほとりの水屋神社では富士山御霊水を汲むこともできる。

1泊2日の巡礼の最後に清らかな水に触れることで、旅の体験が静かに定着していく感覚がある。帰宅後に五感メモを書き起こすと、この湧玉池の水温や匂いの記憶がいちばん鮮明に残っていることが多い。

滞在目安:40〜60分

富士山パワースポット巡りを充実させる3つのコツ

1. 北麓→南麓の順番で巡る

東京方面からのアクセスなら、初日に北麓(山梨県側)、2日目に南麓(静岡県側)と回ることで移動の無駄がなくなる。帰りは新東名高速を使えば東京方面へスムーズに戻れる。

2. 各スポットで最低30分は滞在する

到着から15分は都会の感覚が抜けない。20分を過ぎたあたりから身体が切り替わる感じがあるので、1箇所あたり30分以上は確保したい。写真を撮って移動するだけでは「観光」で終わってしまう。

3. 水を持ち歩く

私の体感では、水を一口飲んでから五感メソッドに入ると嗅覚の感度が上がる。富士山エリアは標高差もあるので、こまめな水分補給は体調管理の面でも重要だ。

よくある質問

Q. 車がなくても巡れますか?

北口本宮冨士浅間神社は富士山駅から徒歩圏内で、忍野八海もバスでアクセスできる。ただし、新屋山神社や河口浅間神社は公共交通機関だと本数が限られるため、レンタカーがあると旅の自由度が格段に上がる。富士山駅・河口湖駅周辺にレンタカー店がある。

Q. ベストシーズンはいつですか?

春(4〜5月)と秋(10〜11月)は気温が穏やかで巡りやすい。夏は観光客が多く、冬は新屋山神社奥宮が閉鎖される。ただし、雨の日はかえって人が減り、空気が澄んで土地の情報量が増えるので、天候を理由に延期しなくてもいいと個人的には思っている。

Q. 1日で全部回れますか?

物理的には可能だが、おすすめしない。1日に5箇所を詰め込むと3箇所目あたりから五感がぼんやりし、後半の体験が薄れてしまう。巡礼の質を保つなら、1日2〜3箇所が上限だ。

Q. 富士山に登らなくてもパワースポットの恩恵は感じられますか?

登山しなくても、ふもとの神社や湧水地で十分に土地の空気を味わえると感じている。むしろ、登山の体力消耗がないぶん、五感に集中できるという声もある。龍脈の考え方でいえば、気は山頂から尾根を伝って麓に流れるとされており、ふもとの龍穴にこそ気が集まるという見方もある。

参考文献

  • 富士山本宮浅間大社 公式サイト「境内のご案内──湧玉池」(fuji-hongu.or.jp
  • 北口本宮冨士浅間神社 公式サイト「御由緒」(sengenjinja.jp
  • 山梨県公式観光情報「山梨のパワースポット」(yamanashi-kankou.jp
  • 河口浅間神社 公式サイト(asamajinja.or.jp